落花狼藉 1
がこの旅にもなれた頃のこと、一行は それほど大きくもない川の流れる街に着いた。
宿を取ると はいつものように 悟空を伴って その河の様子を、調べに出かけた。
が出掛ける時は、たいてい悟空が 着いて来る。
一人でも充分に強いなのだが、そこは やはり女性と言うことで、4人が4人なりに
心配してのことだった。
悟空にしてみれば、その間だけは を独占できるのだから、嫌がるはずも無く
喜んで 護衛に着いて来てくれていた。
河について の顔色が、明らかに 渋く 悪いものになったのを見て、
悟空は 今までとは違う調査になると 感じていた。
こんなに 水の悪い河は、旅に出て以来初めてだったからだ。
野宿でも水には困ったことが無いくらい 桃源郷の水質は 悪くない。
いままでも 調査とは名ばかりで、どちらかと言うと 河仙を尋ねるのが 目的のようにさえ
感じていたのに、の態度が いつもとは違って 糸を張り詰めたように思える。
これからどうなるのか、悟空は 黙ってみていた。
は 川の岸まで降りると、片手を水に入れて しばらく目を瞑っていたが、
「悟空、もっと上流の方にも行きたいのだけど、いいかしら?」と、振りかえりながら 言った。
「いいけどさ、この河 なんかすごいことになっているんだろ。その位なら 俺にもわかるよ。
、一度宿に帰って 三蔵に相談した方が いいんじゃねぇのか?」悟空の心配そうな返事に、
「相談はするけど、もう少し調べないと 説明のしようが無いのよ。
せめて原因くらいは、突き止めておかないと・・・・・・・それに、この河の 河仙にも 会って
話は聞かないとならないわ。心配してくれて ありがとう。」悟空が言う通り、
事態は深刻そうなのだが、ここで 何か言っても始まらないと判断したは、
とにかく 上流に向かうことにした。
河なりに 上流に向かって しばらくすると、不審そうな工場が あった。
2人は その工場の排水管のあたりを 調べたが、どうやら間違いなく この工場の汚染で、
河が汚れているらしい。
は 身体がだんだん重く感じ始めていた。
ただの汚染なら こんなに自分に影響が出るはずが無い。
まして この河は 自分の河ではないのだ。それほどの 影響は無いはず。
それなのに 身体の力が抜けていくように感じる。
この汚染は どういった内容のものなのか・・・・・・、早く 河仙に会わなくては ・・・・・・・。
工場のかなり上流に 河仙のすみかはあった。
事情を聞くと、桃源郷に異変が起こり 妖怪が狂い始めた頃から、あの工場からの汚染も
始まったらしいことを、訴えた。
こんな小さい河の力では、汚染を浄化できるはずも無く 自分は 上流に逃れて来た・・・・と、
病にふせってはいるが、しっかりと に説明をしてくれた。
いつもより かなり帰りが遅くなっていることにきづいた2人は、
今日のところは 宿に帰ることにして、来た道を歩いていた。
「、なんだか 顔色が悪くないか? さっきの人も具合悪そうだったしさ、大丈夫か?」
悟空は いつもよりが歩くのが 遅いし、だるそうにしているのを心配して、声をかけた。
「ん?大丈夫よ、悟空。心配してくれてありがとう。」
出来るだけ 普段どおりに 微笑んでみたものの、かなり辛くなってきていただった。
先ほどの工場のところまで 戻ってきた時のこと、目がかすんできたは そのまま そこに
ドサッと 倒れてしまった。
いままで 辛そうにしてはいたが、なんとか 横を歩いていたので 宿に着いたら休ませようと
思っていた悟空は、びっくりした。
「?・・・・・! おい、大丈夫か?返事してくれよ!」悟空は、を 自分に抱えると
身体をゆすって呼んでみたが、気を失ったは 答えなかった。
悟空は を 背に背負うと、宿までの道を 急いで帰った。
を背にして 宿の入り口を入ると、飯店をかねた食堂に3人が 待っていた。
何時に無く帰りの遅い2人を 心配してのことだった。
「三蔵、が大変なんだ!」3人をみとめると、悟空は焦ったように言った。
2人で遊んでいて遅くなった位にしか考えてなかった 三蔵は、悟空の声に振りかえると、
持っていた新聞を放り出して、悟空に近寄った。
「どうした? 何があったんだ? 刺客にでも襲われたのか?」
思い当たることを矢継ぎ早に 尋ねる。
「・・・・違うよ、・・・・・でも が ・・・・・・・・倒れちゃったんだ。」
ここまで 早く帰ることに集中していた悟空は、汗もかいていたし 息が切れていた。
「三蔵、このままでは 悟空は 落ち着いて話せませんよ。を降ろして 寝かせてあげないと
いけませんし、悟空に 息をつかせてあげないと・・・。」八戒に そう言われて、
「ああ、そうだな。は 俺が運ぶ。」そういって、悟空の背からを 自分の腕に抱きとると、
壊れ物を扱うように 優しくベッドまで運ぶ 三蔵。
「悟空、を 休ませたら 話を聞く。八戒、それまでに そいつに なんか食わせておけ。」
言い置いて、三蔵は 今夜の部屋へと消えた。
「さあ、悟空。今の内になんか食べた方が いいですよ。三蔵のことですから、
話の内容によっては、どうなるか解りませんからね。」八戒は、悟空に夕食を準備した。
「おまえ、あんな状態のを 連れて帰って よくもまあ、撃たれなかったね〜。」
悟浄は、しきりと感心して 悟空に言った。
「悟浄、三蔵は ある意味 のことに関しては悟空のことを、信頼しているんですよ。
悟空が、何もしないで をあんな状態にするはずがないことを・・・・・・・。
そうでしょ? 悟空。」八戒は 念を押すように、悟空に言った。
三蔵の名を借りては 言ってはいるが、それは 八戒の気持ちであり、確信でもあった。
悟空は、口をご飯でいっぱいにしながら、八戒の言葉に 頷いていた。
---------------------------------------------------
